2025年度 第74回 朝日広告賞<一般公募・デジタル連携の部>受賞作品
2025年度 第74回
朝日広告賞<一般公募・デジタル連携の部>受賞作品

2025年度第74回朝日広告賞「一般公募・デジタル連携の部」グランプリは、京都外国語大学による課題を扱った作品。世界に実在する“少し変わった”料理の名前と、皿に載ったQRコードを入口にして、料理の背景にある社会や価値観まで知ることができるという仕掛け。タイトルは「CRAZY MENU」。制作に携わった博報堂・CMプランナーの一瀬知恵氏、同社デザイナー・アートディレクターの中馬拓人氏に話を聞きました。

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博報堂・中馬拓人氏(左)、博報堂・一瀬知恵氏(右)

メモしていた自身の経験が発想の源に

グランプリ受賞のご感想は。

一瀬:めちゃくちゃうれしくて、知らせを受けてからすぐに中馬さんに電話をしました。そうしたら「え...? あ、そう。」という感じで反応が薄くて、「もっと喜んで!?」と思いました(笑)。

中馬:いやいや(笑)、びっくりしすぎて反応できなかったんです。僕もすごくうれしかったです。

朝日広告賞にはどのような印象を持っていましたか?

一瀬:会社の憧れの先輩たちが受賞しているので、自分もいつかは獲りたいと思っていた賞でした。

中馬:朝日広告賞では、わかりやすく面白いアイディアが評価されるイメージがあります。今まで「面白いと思ったんだけどなぁ、面白くなかったのか……」という気持ちを繰り返してきたので、グランプリは本当にうれしく思います。声をかけてくれた一瀬さんに感謝しています。

どのような経緯で、ふたりで応募することに?

一瀬:中馬さんとは、私が新人の頃に1度仕事でご一緒しただけですが、その後も何かとお話しする機会がありました。同期のデザイナーがすでに別の人と組んでいたこともあって、先輩の中馬さんに声をかけ、一緒に取り組むことになりました。

選んだ課題は、京都外国語大学の課題「第二外国語(初修外国語)の魅力〜高校生に第二外国語を学ぶ魅力をPRする広告〜」でした。アイデアの出発点は?

一瀬:日頃から気になったことはなるべくメモをするようにしているのですが、その中に「海外料理は、名前を見てもどんな料理か想像がつかない」というものがあり、京都外国語大学の課題に使えそうだと思いました。具体的な料理名もメモしていたのですが、それが応募作品に載せた「ストロッツァプレーティ(神父の首締め)」というパスタです。和訳が強烈で、いったいどんな料理なんだろうと検索した覚えがあります。こういう不思議な名前の料理はほかにもあるに違いないと思ったのがアイディアの出発点でした。

作品に込めた思いをあらためて。

一瀬:もしも自分が高校生だったら、単に「言語を学ぶ大学」よりも、「その言語が使われている国の歴史や文化まで学ぶ大学」と言われる方が興味が持てると思いました。京都外国語大学のカリキュラムを調べてみると、実際にそうした授業があることも確認できました。ちなみに「ストロッツァプレーティ(神父の首締め)」という料理名は、諸説ありますが、中世のイタリアで教会が税を徴収していた地域があり、聖職者に対する「そんなに食べるなら、のどに詰まらせてしまえ」という皮肉表現に由来するそうです。そうした言葉の背景にある社会や価値観まで読み解くことに学びがあると考え、「直訳の違和感」をきっかけに言葉と文脈の関係を体験してもらう設計としました。

不思議な料理名とともにお皿の絵の上にQRコードを展開し、QRを読み込むと「言葉の奥にあるもの」を知ることができる仕掛けになっています。

一瀬:広告を見た人が必ずQRコードを読み込んでARを立ち上げてくれるとは限りません。特に高校生は、ショート動画など手軽に楽しめるコンテンツに慣れている世代なので、わざわざスマホをかざしてQRコードを読み取るというひと手間は、なかなか取ってもらえないと思いました。そこで、ネットやAIで世界各国の料理を調べ、「いったいどんな料理!?」とスマホをかざさずにいられなくなるような料理名を選びました。

15段の紙面に「アリの木登り」「ご飯泥棒」「おじさんの和え物」など、ユニークな名前が並びました。

一瀬:例えば「アリの木登り」は中華料理で、春雨にからまったひき肉が、アリが木に登っているように見えることからその名が付けられたそうです。他にも「松鼠桂魚(リスの魚)」や「獅子頭(ライオンの頭)」など、見た目をもとに名付けられた料理がたくさんあります。調べていくと、中国ではこうした情景や見立てを取り入れた表現がたくさんあることも知りました。単語の意味だけでなく、その国で共有されている表現の感覚まで見えてくるのが面白いと思いました。

「CRAZY MENU」というタイトルもユニークでした。

一瀬:タイトルは中馬さんの案です。自分では「言葉で味わうメニュー」といった説明的なタイトルしか思い浮かばなくて、「たとえば『CRAZY MENU』とか?」と提案していただいたときに、気になる感じがしていいと思いました。「狂ったメニューってどういうこと?」となるだろうなって。

中馬:ひと目でこの企画が分かるタイトルをつけた方がいいと意見しました。でもまさか適当に言ったタイトルがそのまま採用されるとは思っていませんでした(笑)。

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お皿の大きさを変えたり、枠で囲ったりした意図は。

中馬:レストランのメニューは、前菜、メイン、デザートの区別がなんとなく分かるようになっていることが多いので、そのイメージで配置しました。囲みの中の6皿はデザートのイメージです。

一瀬:特にインパクトがあると感じた料理名は“オススメの料理”として大きく中央に配置してもらいました

「ことばは世界を美味しくする。」というコピーも印象的でした。

一瀬:「料理」と「料理名を通して世界を見る目が一段上がること」をブリッジできる言葉を置きたいと考え、この表現に落ち着きました。

AI時代に外国語を学ぶ意義について、問いかける意味合いもあったのでしょうか。

一瀬:正直なところ制作の段階ではそこまで深く考えていませんでしたが、AIが翻訳をしてくれる時代になったからこそ、言葉の背景にある文化や歴史まで知ることに、外国語を学ぶ価値があるのだと、今あらためて感じています。

デジタル系や理系でなくてもアイデアで勝負できる

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新聞広告の可能性についてどのように考え、現業にどう活かしていきたいですか?

一瀬:今年度は新聞広告の部にも5作品応募したのですが、1つも入賞できませんでした。私はコピーを書くのが苦手で、今も修行中です。一方でストーリー性のある仕掛けを考えるのが好きで、CMだけでなく、人々の行動変容まで設計できるプランナーになりたいです。自発的に興味を持ち、調べたくなるような体験をつくることに魅力を感じています。新聞広告はそれに適したメディアだと今回実感しました。特に新聞×デジタルの施策は、デジタルに移行する時間軸を活かしてさまざまな表現ができるので、現業でも挑戦してみたいです。

中馬:デザイナーとして純粋にグラフィックを手がけたいという思いがあって、現業でそうしたチャンスがなかなかないからこそ今回の制作は楽しかったです。現業でも新聞広告に携わっていけたらいいなと思います。

次回の応募者へメッセージをお願いします。

一瀬:デジタル連携部門の上位作品はプロトタイプの完成度が高い印象がありますが、今回私たちの作品を評価していただけたことで、アイディアそのものも見ていただける部門なんだと感じました。私のように文系の人や、コピーライティングが得意ではない人にも、チャンスがあると伝えたいです(笑)。

中馬:正直デジタル部門にあまり積極的ではありませんでしたが、挑戦してよかったです。ポスターなどではできない「(手元に現れる)新聞×(どこにでも広げられる)デジタル」だからこそ実現できる企画を考えることは、この部門にしかない楽しさがあると思いました。デジタル領域に秀でていなくとも、考え方を楽しめるコンペだと思います。

賞金の使い道は。

一瀬:中馬さんと一緒に「ストロッツァプレーティ(神父の首締め)」を出してくれるレストランで乾杯したいです。残りの賞金は念願の歯列矯正に使う予定です!

中馬:しばらくぶりにバイクを買っちゃおうかなと思っています。

<一般公募・デジタル連携の部>入賞作品一覧を見る
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