2023年度 第72回 朝日広告賞<広告主参加・デジタル連携の部>受賞作品
2023年度 第72回
朝日広告賞<広告主参加・デジタル連携の部>受賞作品

2023年度第72回朝日広告賞「広告主参加・デジタル連携の部」グランプリは、味の素の「団ランランタン」キャンペーン。近年話題になっている「ファビング」に着目し、新聞広告で工作したランタンを、ライトをつけたスマートフォンに乗せて食卓を彩り、会話を楽しんでもらう企画を提案。家族や友人との団らんが増えるクリスマスシーズンに展開しました。同社食品事業本部・マーケティングデザインセンター・コミュニケーションデザイン部・クリエイティブグループ・神長純江氏、同部・コミュニケーション戦略グループ・山本桃子氏に話を聞きました。

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同社食品事業本部・マーケティングデザインセンター・コミュニケーションデザイン部・クリエイティブグループ・神長純江氏(右)、同部・コミュニケーション戦略グループ・山本桃子氏(左)

「ファビング」の問題に着目し、
団らん時間とスマホの使用時間が長い北海道エリアで展開

広告を出稿した背景について。

神長:味の素は、家族や友人と食卓を囲んで会話を楽しみながら食事をする“共食”の喜びを、様々な形でお伝えしています。活動の中で着目したのが、社会課題となりつつある「ファビング」です。ファビングとは、「phone(電話機)」と「snubbing(無視する)」を組み合わせた造語で、スマートフォンなどのモバイル端末に気を取られて、目の前の話し相手や周囲の人を無視する行為のこと。スマートフォンを否定するのではなく、ポジティブに一緒にいる相手と、共食の楽しさを自分事として体験できるような広告にしようと検討する中で、今回の企画に至りました。

山本:弊社はアメリカの調査会社・ギャラップと連携し、調理の楽しさや、共食とウェルビーイングの関係性について調査を実施。その結果の一つとして、「1人より誰かと食べるほうが、ウェルビーイングの実感度が高くなる」ということが明らかになりました。こうしたエビデンスも、今回の企画の背景にありました。

キャンペーンの概要は。

神長:「団ランランタン」の新聞広告は、北海道エリアに限定して出稿しました。総務省統計局のデータによると、北海道は47都道府県の中で、家族との団らんなど「休養・くつろぎ時間(週平均)」が最も長く、「スマートフォン・パソコンの使用時間」の長さは、全国2位。このエリアにおいて、家族や友人との団らんが増えるクリスマスの時期を狙い、まず新聞を通じて企画を発信し、さらにより多くの人に楽しんでいただくために、ランタンシェードの印刷用データをダウンロードできるランディングページを設けました。同時に北海道のレストラン・カフェ10店舗にて、実際にランタンの灯りで食事と会話を楽しんでいただくイベントを開催しました。

山本:新聞は“面”としての大きさのインパクトがあるので、キャンペーンの象徴として打ち出しました。カフェのイベントにおいては、SNS投稿によるドリンクサービスなど、デジタルでの拡散を想定した導線設計を行い、新聞読者に限られた企画にならないようにと心がけました。

新聞広告の制作に際して留意したことは。

神長:ライトのついたスマホの上にランタンを乗せると、新聞の裏面に印刷された文字とイラストが浮かび上がり、表面の切り絵と重なってハッピーなストーリーが完成し、それを見てワッと会話が盛り上がる。そこまでを思い描いて設計しました。また、クリスマスに食事を共にする相手は、家族、親子、友人、恋人などいろいろ考えられるので、どんなシチュエーションでも楽しんでいただけるよう、4パターンのランタンアートを展開しました。

制作の過程では、どのくらいの部屋の明るさでランタンの効果が出るのか、浮かび上がった裏面の印刷が表面のイラストに上手くフィットするか、4つのストーリーのバランスが良いかなど、ランタンアートを担当された切り絵作家のたけうちちひろさんのご意見も伺いながら、細かく検証しました。

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出稿後の反響はいかがでしたか?

神長:ご家庭で楽しんだという感想や、SNSでの投稿など、多くの反響がありました。また、個人的に知り合いの消防士さんから、「災害時にスマホをライトとして使えることを年配の方々に理解してもらうために、団ランランタンを活用したい」というお話をいただきました。その他、福祉系の方から、「施設のクリスマスパーティーでランタンを作って楽しみます」といったお話をいただくなど、一般家庭以外のフィールドにも意外な広がりがありました。

新聞広告は、課題解決に向けた具体的な行動を促しやすいメディア

新聞の特性や、新聞とデジタルの連携について、お考えを聞かせてください。

神長:社会課題というと壮大なものをイメージしがちですが、コミュニケーションにおいては、いかに身近なことから“気づき”をご提供できるかが重要なポイントだと考えています。新聞は生活者にとって身近なメディアで、日頃から記事や広告の切り抜きをしている人もたくさんいます。今回の企画のように、お子さんが簡単に工作を楽しめるというのも「紙」ならではの特性です。そういう意味でも新聞は課題解決に向けた具体的な行動を促しやすいメディア。同時にスマートフォンも、生活者にとって欠かせないものになっています。ですから「新聞×スマホ」はごく自然な組み合わせでした。

山本:新聞は“体験装置”として使うことができるメディアで、今回の企画で言えば、ランタンを楽しむ体験ができて、しかも作ったランタンはずっと保存しておくことができる。そこがテレビCMやデジタル広告にはない特性です。また、クリスマスシーズンなど季節や日時と連動させて訴求効果を高められるというのも新聞を活用する一つのポイントになっています。

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今後の広告展開について。

神長:今は顕在化していなくてもいずれ大きな社会課題になり得る物事についてアンテナを張り、課題の解決に貢献していきたいと思っています。

山本:弊社は商品パッケージなどのプラスチック使用の削減や、共食に関するデータ集積、フードロス対策など、社会課題の解決に向けた様々な取り組みを行っています。それと同時に、クリエイティブの力で社会課題の解決に貢献していくプロジェクトを進めています。今回の朝日広告賞でグランプリをいただいた団ランランタン、優秀賞をいただいた「飯スマホやめ〜い!ステッカープロジェクト」「フードロスラ」のキャンペーンは、いずれもその一環でした。朝日新聞社はクリエイティブの提案も積極的にしてくださいますので、そのご縁を大事にしながら、今後も効果的な施策を模索していきたいです。

最後に、改めてグランプリの受賞のご感想をお願いします。

神長:規模としては大きなキャンペーンではありませんが、社会課題に対する生活者の意識をクリエイティブの力で喚起したところが評価されたと伺い、うれしく思っております。グランプリをいただいたことで、人の心を動かすことができたと改めて実感しています。

山本:常に社会課題と向き合っている新聞社の広告賞において、社会課題をテーマにした広告を評価していただいたことに意義を感じています。これを励みに、クリエイティブの価値を最大限に引き出すコミュニケーションを引き続き追求していけたらと思います。

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