2023年度 第72回 朝日広告賞<一般公募・新聞広告の部>受賞作品
2023年度 第72回
朝日広告賞<一般公募・新聞広告の部>受賞作品

2023年度第72回朝日広告賞「一般公募・新聞広告の部」グランプリは、大塚製薬の課題「ポカリスエット」を扱った作品。10代ならではの感情を瑞々しく捉えたコピーと写真が、審査委員たちの心をつかみました。制作したのは、ADKマーケティング・ソリューションズ・デジタルビジネス本部・第4ビジネス局・第13デジタルビジネスグループ・プランナー・佐々木裕史氏、デザイナー/アートディレクター・武田亜輝子氏、フォトグラファー・近藤拓海氏の3人。佐々木氏は東京在住、武田氏と近藤氏は香川県高松市在住で、オンラインで連絡を取り合いながら今作を制作。受賞者インタビューも東京と香川をリモートで結んで行いました。

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ADKマーケティング・ソリューションズ・デジタルビジネス本部・第4ビジネス局・第13デジタルビジネスグループ・プランナー・佐々木裕史氏、デザイナー/アートディレクター・武田亜輝子氏、フォトグラファー・近藤拓海氏

東京と香川をオンラインで結んでアイデアを交換

グランプリ受賞のご感想は。

佐々木:僕はシェアハウスに住んでいて、受賞の連絡をメールで確認した時は、住人たちと一緒にお酒を飲んでいたんです。びっくりしすぎて、めちゃくちゃ飛び跳ねて喜びました。周りから「うるさいよ!」と怒られるくらい(笑)。でも第三者にはまだ明かせない時期だったので、「何がうれしいのか、話せる時が来たら教える」と言ってごまかしました。そしてすぐに武田さんに電話をかけました。

武田:「まだ、練習中なだけ。」という佐々木君のコピーがすばらしかったので、「これはいけるかも!」と思っていましたし、朝日広告賞のウェブサイトに、受賞候補作品の一つとして掲載された時も、心の中でほのかな期待をしていました。でもまさかグランプリとは! 朝日広告賞の審査委員の皆さんは、広告業界では “神”のような存在。その方々に評価していただいたことに感激しました。近藤さんには直接朗報を伝えたかったので、内容を明かさずに「大変なことになった。とにかく会いたい」と呼び出して、伝えました(笑)。

近藤:武田さんからグランプリだと聞いて、一瞬、記憶が飛ぶくらいの衝撃でした。夢にも思っていなかったので、本当にうれしかったです。

佐々木さんは東京在住、武田さんと近藤さんは香川県高松市在住です。3人はどのような経緯で朝日広告賞に応募したのでしょう?

佐々木:僕は普段はデジタルビジネスのプランナーをしているのですが、2年半前にコピーライティングを学ぶ目的で「宣伝会議」主宰のクリエーター養成講座「アートとコピー」を受講しました。文字通り「アートディレクターとコピーライターの出会いの場をつくる」というコンセプトの講座で、受講生同士がコンビを組んで課題に取り組んだり、コンペに挑戦したりする内容でした。ここで武田さんと出会い、一緒に朝日広告賞を始め様々なコンペに挑戦しました。他のアートディレクターとも組みましたが、武田さんは率直に意見してくださるところがとてもやりやすくて、今年も一緒に朝日広告賞に挑戦したいと思い、お誘いしました。

武田:私は高松市を拠点にフリーランスのデザイナー兼アートディレクターをしています。今回は佐々木君のコピーとアイデアがとにかくすばらしいと思い、「絶対に写真がいい!」と確信して、同じく高松を拠点にフリーランスのフォトグラファーとして県内外で活躍されている近藤さんに撮影をお願いしました。近藤さんとは仕事柄、共通の知り合いがたくさんいて、同じクライアントの仕事をしたこともあります。私は近藤さんが撮る写真が大好きなんです。

近藤:僕は大学では写真コースに通っていたのですが、もともと広告が好きで、大学時代に1度、グラフィックコースに通う友だちと組んで朝日広告賞に応募したことがあります。今回は9年ぶりの応募でした。

制作は東京と香川で、ずっとリモートで進めたのですか?

佐々木:そうです。全部オンラインで。

近藤:なので、僕はまだ佐々木さんと直接お会いしたことがないんです。授賞式でやっと会えます(笑)。

武田:佐々木君と私も、私が宣伝会議の講座の卒業プレゼンのために上京した時に1度会っただけ。私の子どもがまだ5歳ということもあって、なかなか県外に出る機会がないのですが、今回は晴れの授賞式。自分へのご褒美として東京で3泊する予定です(笑)。

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高校生の微妙な心情を「練習」ということばに託す

制作のプロセスについて聞かせてください。

佐々木:取り組む課題については、よく知られた商品の方がパッと見て伝わりやすいと思い、大塚製薬の課題「ポカリスエット」を選びました。武田さんとブレストしていく中で、子どもでも大人でもない、高校生ぐらいの年代の葛藤や挫折、キラキラしているだけじゃない青春、だけど前を向きたい気持ち……。そういう微妙なニュアンスを何とか表現できないかという話になりました。そこで思い浮かんだのが「練習」ということばです。大人になるとあまり使わないことばですが、失敗したりうまくいかなかったりしても、「練習」と捉えることで、前を向くことができる。未来の可能性を表すことばのような気がして、「まだ、練習中なだけ。」というコピーを思いつきました。他にもいくつか考えたのですが、武田さんが「めっちゃいい!」と言ってくださったこのコピーに決めました。

武田:佐々木君のすばらしいコピーに合わせるビジュアルは、高校生の表情がいいと思いました。近藤さんは瑞々しい写真を撮る方なので、ぴったりだなと。モデルは同じ高松市に住む友人の娘さんです。素人の普通の高校生なのですが、「不安なような、ちょっと落ち込んでいるような、でも意志を感じるような表情を撮りたい」という私の“ムチャぶり”に応えてくれました。

近藤:今作に関しては、プロのモデルさんでなく素人の彼女で良かったなと思います。写真のモデルは初めての経験だったそうで、その緊張感がビジュアルのコンセプトにうまくはまりました。

採用した写真のポイントは?

武田:3〜4時間かけて近藤さんにいろいろな角度で撮っていただいたのですが、表情を重視した結果、横顔になりました。採用した写真については、全員で「これだね!」となりました。

近藤:コンセプトを聞いた上で、撮影自体は任せてもらいました。風の強い日で、その風がいい具合に髪の毛に動きをつけてくれました。歩道橋の上で撮影したのですが、奥に写り込んだ建物が、図らずも学校の渡り廊下のようにも見えて、それも良かったなと思います。

佐々木:僕は締め切りが近かったこともあり、高松での撮影には立ち合いませんでした。撮影の途中で送られてくる画像を確認しつつ、東京からエールを送っていた感じです。

表現的に留意したことは。

武田:朝日広告賞の応募作品に求められているのは、新しい広告表現です。でも今作は、むしろ普遍的なテーマを意識していました。審査委員の皆さんが高校時代のことを思い出したり、お子さんに重ね合わせたりしながら、思春期特有の感情に思いを馳せてくれたらいいなと。

佐々木:ポカリスエットが築いてきたブランドイメージを大事にしながらも、広告賞に応募する以上は、既存のイメージに寄り過ぎないようにと心がけました。また、何の練習中なのか、部活なのか、恋愛なのか、勉強なのか、具体的に入れた方がいいのか悩んだのですが、武田さんから「絶対に何も足さないで!」と言われて、その判断もすごく大きかったです。

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新聞の媒体特性についてはどのような印象がありますか?

武田:個人的に大きな新聞紙に印刷されたビジュアルが好きなんです。また、抜群に信頼度の高いメディアなので、大事なメッセージを伝えたい時は新聞、というイメージがあります。

佐々木:新聞広告は、動画などに比べて入れられる情報量が限られてくるので、静止画1枚でどれだけ想像を広げてもらえるかが勝負です。コピーとビジュアルの距離感も重要で、コピーの内容をそのままビジュアルで表現するだけではつまらないし、両者のイメージが離れすぎていても意味が伝わらない。そこが難しく、醍醐味でもあるのかなと思います。

近藤:自分は1枚の写真で魅せる力を信じて仕事をしています。新聞広告はまさにそれができる場所だと思います。

皆さんの現業での活動や、今後やってみたい仕事について聞かせてください。

佐々木:現業では主に、デジタルメディアのプランニングを担当しています。クリエーティブの仕事にも興味があるので、いつか携わってみたいです。

武田:普段はデザイナー兼アートディレクターとして、地元の企業のブランディングなどに、立ち上げから関わるような仕事が多いです。新聞広告の制作には携わったことがないので、今回の受賞が仕事につながっていくといいなと思います。

近藤:僕は店舗のブランディングに向けた写真を撮ることが多いのですが、もともと広告写真を撮りたくてフォトグラファーになったので、広告の仕事をもっとやっていきたいです。日本全国どこでも、海外でも、仕事ができたらと思っています。

賞金の使い道は。

佐々木:ロンドンに住んでいる友人に会いに行きたいです。

武田:イタリアのジョエ・コロンボがデザインした「ホビーワゴン」の限定色が出たので、それを買います(笑)。

近藤:カメラ機材を買います。あとは、授賞式のために上京した際の宿泊費にします(笑)。

<一般公募・新聞広告の部>入賞作品一覧を見る
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