2021年度第70回朝日広告賞「広告主の部」グランプリは、サントリーホールディングスの全15段広告。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言がたびたび発出された昨年の11月3日、「人生には、飲食店がいる。」というキーメッセージを掲げ、飲食店を応援するキャンペーンを展開しました。同社コミュニケーションデザイン本部・宣伝部・制作グループの細田咲彩氏に話を聞きました。
グランプリ受賞のご感想は。
今年度で70回を迎える歴史ある広告賞の舞台で、そうそうたる顔ぶれの審査委員の方々に選んでいただき、大変光栄に思っております。当社にとっては2001年度の受賞以来20年ぶりのことで、それも誠にうれしく、制作に携わったすべての方に感謝しております。
広告を出稿した背景について。
昨年は年明けから全国各地で新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出され、宣言が解除されてもまん延防止重点措置の実施が続きました。飲食店は営業時間の短縮や酒類の提供の自粛を余儀なくされ、それがいつまで続くのかわからない状況でした。当社は創業以来、お酒や飲料の提供を通じて「人と人とのつながり」を飲食店の方々と一緒に創造してきました。大事なパートナーが苦境に立たされている今こそできることはないか。そうした思いから企画を進めていきました。
広告表現はどのように決まっていったのでしょう。
継続的に飲食店を支援できて、なおかつサントリーらしいキャンペーンにしたいという思いがありました。制作チームで議論を進めていく中で、「コロナ禍によって飲みに行く機会が減る中で、飲食店での楽しい語らいや、温かなひとときを忘れかけているのでは……」という話になりました。そうした自分たちの実感から、飲食店という「場」の価値や魅力を皆さんに思い出していただけるような広告を展開できないかと考えました。
制作に際して留意したことは。
「飲みに行こう」というメッセージを発信しにくいコロナ禍の状況にあっても、飲食店を応援したいという思いはしっかりと伝えたかったので、キーメッセージは「人生には、飲食店がいる。」と、覚悟をもって言い切る表現を選びました。ボディーコピーは押しつけがましくならないように、そっと寄り添うようなことばで、飲食店で過ごす楽しいひとときを描写しました。企業の思いを伝える広告なので、コピーの色は企業カラーである「サントリーブルー」に。イラストはイラストレーターの平井利和さんに「飲食店でのすてきな思い出がよみがえるようなイラストを」とお願いして描き下ろしていただきました。最初の案では差し色の黄色がなかったのですが、「温かな時間」がより伝わるようにと色が足されました。
広告キャンペーンの展開方法について。
まずは飲食店の方々にサントリーの思いを伝えたかったので、店々に掲示できるポスターを制作し、営業を通じて飲食店にお配りしました。とはいえ国内すべての飲食店にお配りするのは難しいので、当社の特設サイトを通じてポスターの画像を無料でダウンロードできるようにしました。次にサントリーの思いを世の中の方に知っていただけるよう、この活動に込めた思いをステイトメントにしたためたグラフィックを新聞広告で展開しました。さらに、多くの方々に飲食店の魅力を思い出していただけるよう、飲食店ならではのシーンや思いに笑顔のイラストを添えた16種類のポスターを道頓堀や新橋など飲食店周辺エリアを中心に交通広告や屋外広告を掲示しました。
新聞広告に期待した役割は。
サントリーの広告史をさかのぼると、1907年の「赤玉ポートワイン」の時代から新聞広告を積極的に活用しています。新聞はじっくり文字を読んでいただけるメディアなので、企業メッセージを発信する場としてふさわしいと考えています。近年は紙面をスマホで撮影してSNSにアップしてくださる読者も多く、今回も幅広い世代への波及効果を期待してステートメントグラフィックを展開しました。
出稿後の反響はいかがでしたか?
当社のSNSに多くの共感コメントや「いいね」をいただいた他、飲食店の方々から「励まされた」「ありがとう」という声がたくさん寄せられました。中には長文のお手紙を寄せてくださった方もいて、うれしく拝読しました。
今後の広告展開について。
一過性のキャンペーンで終わらせず、飲食店の応援を継続していくつもりです。コロナ禍の状況が今後どうなっていくかわかりませんが、「人と人とのつながり」というメッセージを大切にしつつ、世の中の動きに合わせたメッセージを発信していきたいです。
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