2019年度 第68回 朝日広告賞<広告主参加>グランプリは、パイロットコーポレーションの全15段3点シリーズ。人物の佇まいにマッチしたコピーと、味のある手書きの文字に、審査委員たちの共感が集まりました。広報部課長の田中万理氏に話を聞きました。
グランプリを受賞した感想は。
初めは信じられなくて、何度も確認してしまいました。過去に部門賞をいただいていて、今回もそうではないかと思ったもので(笑)。最高賞だと実感できた時はうれしかったですね。(笑)。
15段のシリーズ広告を2006年から継続しています。審査会では例年評価が高く、おっしゃる通り部門賞を受賞した年もありました。
当初から「書く、を支える。」という同じテーマを続けています。もともとは広告コピーという位置づけでしたが、掲載を重ねるうちに大事なブランドメッセージになっていきました。ブランドステートメントともいえる特別な言葉です。
3点シリーズにしているのは、当社の筆記具の魅力を様々な角度からお伝えすることで、老若男女あらゆる方々に共感していただけるのではないかと考えるからです。毎年恒例の広告だと覚えてくださっている読者の方もいて、ありがたいですね。
新聞で広告を展開した意図は。
新聞は活字でぎっしり埋まったメディアなので、その中に手書きの文字やゆったりとした余白があると、とても目立ちます。当社の筆記具の購買層と読者層の親和性の高さも、新聞を活用する大きな理由です。
グラフィック広告はカラーの駅貼りポスターなども制作していますが、新聞のモノクロ広告にはそれとは違った味わいがあります。新聞紙の温かい風合いもそうですし、万年筆のインクの溜まりや濃淡が程良く再現できるところが魅力です。
筆記具のマーケット事情について教えてください。
デジタル化が逆風かといえば、むしろ手書きの筆記具は見直されています。パソコンが普及し始めた90年代は「紙が消える」「筆記具が消える」と懸念する声もありましたが、当社に関して言うと、2013年に子供向けの万年筆が年間65万本を売り上げる大ヒット。その後も文房具好きな「文具女子」の間で万年筆の愛用が増えるなど、若い世代にもニーズが広がっています。
その一方で、万年筆は特別な時に使うという方も多い。でも万年筆は普段づかいに便利ですし、何より書いた文字がすてきに見える。決してハードルの高い筆記具ではないことを、広告を通じて伝え続けています。
制作チームにはどのようなことを伝えたのでしょう。
「書く、を支える。」というテーマは不変で、これを共有した上で必ずお願いしているのは、掲載する手書きの文字の筆跡の美しさです。美しいといってもペン習字のお手本のようないわゆる「上手い字」ではなく、味のある美しさ。そこで、制作チームが集めてくれた文字サンプルをもとに、広報部で「文字オーディション」を実施しています。
今回の受賞作は、写真のキャラクターとコピーの内容をふまえ、勢いのある筆跡の文字を採用しました。雑な殴り書きのように見えてしまうのではないかと、少し意見が割れたのですが、文字にその人らしさがにじみ出ているという声がまさり、掲載の表現に至りました。
審査会では「コピーが秀逸」という声が多かったです。
イヤなことがあっても書くことで気持ちが整理できたり、SNSよりも手書きの方がメッセージが伝わりやすかったり。こうした誰もが日常的に経験していることを表現したコピーです。
広告の反響は。
毎年手書きの感想が寄せられることが多くて、今回もそうでした。「コピーを読んでこんなことを感じました」とハガキいっぱいに思いを書いてくださる方も。また、近年は紙面をスマホで撮ってSNS上にアップしてくださるケースも増えています。
今後の展望について。
筆記具は言語や文化を問わず世界中の方に使っていただけるツールです。当社は世界190の国と地域で商品を展開しています。100年以上にわたり筆記具を作り続けてきた企業として、書く楽しさや書き心地の良さを伝え続け、書くシーンを増やしていけたらと思っています。
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