2024年度 第73回 朝日広告賞<一般公募・新聞広告の部>受賞作品
2024年度 第73回
朝日広告賞<一般公募・新聞広告の部>受賞作品

2024年度第73回朝日広告賞「一般公募・新聞広告の部」グランプリは、彩きもの学院の課題「着物を美しく着る文化を後世に引き継ぐ」を扱った作品。着物を一切見せずに着物の魅力を想像させるアイデアが審査委員の共感を呼びました。制作に携わったタイガータイガークリエイティブ・CMプランナー/コピーライターの奥野真由氏、Cage Photo・制作ディレクター/カメラマンの難波航太氏に話を聞きました。

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タイガータイガークリエイティブ・CMプランナー/コピーライター・奥野真由氏(左)、Cage Photo・制作ディレクター/カメラマン・難波航太氏(右)

高校時代のクラスメート同士で初応募

グランプリ受賞のご感想は。

奥野:うれしさもありますが、それ以上にホッとしました。私は2年前に広告の仕事に転職し、朝日広告賞には今回初めて応募したのですが、普段の仕事でなかなか成果を出すことができていなかったので、やっとスタートラインに立てたという気持ちです。グランプリの知らせをメールでいただいた時は、大興奮でした。その日の夜にたまたま難波君と食事する約束をしていたので、直接朗報を伝えました。

難波:僕も今回が初めての応募で、しかも奥野さんから話を聞くまで朝日広告賞の存在を知りませんでした。それから少しずつ、とても歴史がある賞で、審査委員の顔ぶれもすごいとわかってきて、ファイナリストに残った時はめちゃめちゃテンションが上がりました。そのうえグランプリと聞いて涙が出るほどうれしかったです。フリーランスのカメラマンとして頑張ってきて良かったと思いました。

アイデアの出発点は?

奥野:誰もが知っている商品の方が表現として幅が出ると思い、着物の課題を選びました。そして着物の魅力について考えていく中で、自分が浴衣を着て街を歩いた時に注目を浴びたことを思い出し、まず「にんきもの?」というコピーが浮かびました。「着物」と「人気者」をかけた言葉あそびですが、キャッチーでいいかなと。当初は「わたし、にんきもの?」というコピーでしたが、それだと着物を着ている人の性別を限定してしまい、シャープさにも欠けるので、「にんきもの?」に落ち着きました。

着物を見せずに着物の魅力を伝えたビジュアルのコンセプトは。

奥野:最初は写真も自分で撮るつもりでしたが、着物をうまく撮影するのは難しいと考え、負担の少ない方法を選んだ結果、着物を見せない表現になったというのが正直なところです。そこから「にんきものの自分」を疑似体験できるビジュアルに辿りつきました。また、新聞広告は1枚絵のインパクトが勝負だと思ったので、提案するなら30段、となるとプロに撮ってもらった方がいいと判断しました。私には仕事関係ではカメラマンの知り合いがいなかったので、高校時代の友人の難波君にお願いしました。

難波:依頼をもらったタイミングが、ちょうど何かしらのコンテストに挑戦したいと思っていた時期だったので、快諾しました。

写真に写っている人たちの顔ぶれは国際色豊かでした。

奥野:撮影は、私たちが通った高校のすぐ近く、岡山県倉敷市の街並みを背景に行いました。モデルの皆さんは、訪日観光客が増えている時代性をふまえ、外国の方々が中心です。私は行き当たりばったりで街ゆく人に声をかけて被写体になってもらうつもりでいましたが、難波君からさすがにそれは無謀だと言われ(笑)、結局、難波君が知り合いに声をかけて集めてくれました。

難波:作品にも写っている友人に頼んで人を集めてもらいました。その友人のアメリカ人の母親もモデルとして参加してくれたのですが、彼女がとても交友関係の広い方で、「何人くらいがいい? 男女比は同じくらいで、国や年齢もバラバラがいいわね。赤ちゃんもいた方がいいかしら」などといろいろと配慮してくださいました。

それぞれとても自然な表情です。表情のディレクションはしたのですか?

難波:友人以外は初めて会う方ばかりで、でもナチュラルな表情を撮りたかったので、つたない英語でコミュニケーションを取りながら撮影しました。いわゆる演技指導みたいなことはせず、「僕が着物を着ていると思って歩いてついてきてください。僕が振り返ったタイミングで、声をかけたり写真を撮ったりしてください」とお願いして、何度か撮影を繰り返しました。

奥野:皆さんボランティアで協力してくださって、本当にありがたかったです。撮影時間は2時間ほどで、採用したのは早い段階で撮った写真でした。撮られることに慣れていない頃の方が、より自然な表情だったんです。写真を選ぶうえでもう一つ考えたのは、モデルの人数です。リアリティーという意味では多すぎるかもしれませんが、多少リアリティーが薄れても、新聞をパッと開いたときに自分に視線が集まるドキドキ感やインパクトを優先させたいと思い、今回のビジュアルになりました。

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朝日広告賞への応募が、現業にもプラスに

奥野さんは2年前に広告の仕事に転職されたというお話でした。

奥野:前職ではクラフトビールのメーカーでSNSを活用したプロモーションなどを担当していました。その仕事をするなかで広告制作に興味を持ち、ご縁があって今の会社に転職しました。弊社は社員数名の少数精鋭集団で、私が草野球レベルだとすると、先輩社員のみなさんはメジャーリーガー。それほど実力が違うので、自分の企画が社内でほとんど通らず、ゆえに成長も実感できずにいました。でも今回、朝日広告賞に作品を提出する前に社長に見せたら「いいね」と言ってくださったので、自信を持って提出できました。グランプリの受賞を報告したら、普段クールな先輩方が想像以上に喜んでくださって、とにかく嬉しかったです。広告業界でもうちょっと頑張っていいのかなと思いました。

難波さんは普段はどのような写真を撮ることが多いのでしょうか。また、グランプリ受賞をどのような糧にしていきたいですか?

難波:普段の仕事は取材写真や広告写真が主で、他には大学や病院のパンフレットや一般企業のホームページの写真なども撮っています。自分が表現したい写真を撮って仕事にしていくためには、技術だけでなく言葉の重みが必要だと思うので、朝日広告賞の受賞がその一要素になるといいなと思っています。また、基本的に地元岡山を拠点にした活動が多いので、東京や他の地域の人に自分の写真を見てもらう機会にもなりました。

次回の応募者へのメッセージをお願いします。

奥野:広告賞は自分の好きな表現を一気通貫で仕上げることができて、一緒に制作する仲間を選ぶこともできます。今回は難波君が高校時代の友人だったこともあり、文化祭の準備をするような楽しさがありました。自信にもつながると思うので、私のように広告業界に入ったばかりの人こそトライしてみるといいのではないでしょうか。

難波:僕は逆に仕事だと自分の案がすんなり通るんです。でも今回は奥野さんからいろいろと意見してもらえて、それがとても新鮮でした。自分1人で考えると行き詰まることも多いですし、広告賞への応募を通して誰かと一緒に作る面白さを経験してみると、新しい世界が開けていいのかなと思います。

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賞金の使い道は。

難波:自分の写真と向き合うために暗室を作りたいです。

奥野:実は、グランプリの知らせをいただいた時とほぼ同時期に、入籍したんです。なので、新婚旅行費にあてようかと思っています(笑)。

<一般公募・新聞広告の部>入賞作品一覧を見る
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