2017年度 第66回 朝日広告賞「広告主参加の部」受賞作品
2017年度 第66回
朝日広告賞「広告主参加の部」受賞作品

2017年度 第66回 朝日広告賞「広告主参加の部」グランプリは、CULENの30段広告。「新しい地図」の3人が手描きした方位図は、読者それぞれに読み解かれ、SNS上でも大きく拡散されました。アートディレクションを担当した佐野研二郎氏に話を聞きました。

3人が主体となって志を込めた手描きの方位図

グランプリを受賞した感想は。

新人デザイナーの頃、入社から数年にわたって朝日広告賞の一般公募の部に応募していたのですが、全く縁がありませんでした(笑)。ですから20年ほどたって広告主参加の部でグランプリと聞いた時は本当に驚きました。想像ですが、新聞広告単体で評価されたというよりは、「新しい地図」として活動を開始した、稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの新たな挑戦や多方面での活躍を含めた評価だったのではないでしょうか。3人が「NAKAMA」と呼んでいるファンの皆さんの反響にも支えられたと思います。

アートディレクションに際し、どのような依頼があったのでしょう。

クリエーティブディレクターの多田さん、山崎さん、権八さんから、「稲垣さん、草彅さん、香取さんが『新しい地図』として活動を始める。『新しい地図』とはグループ名ではなく、3人とそれを支える人の志とこれからの活動を示す、いわば『風林火山』のようなもの。その旗印を作ってほしい」という依頼を受けました。この時点では新聞出稿の想定はなく、公式ファンサイトに掲げるシンボル的なものをデザインしてほしいという依頼でした。

難しい依頼ですね。

初めは、まさしく旗印のような、男っぽい、力強い方向でデザインしていたのですが、どうもしっくりきませんでした。グリッドで描いた地球や地図の巻物など、「地図」からイメージできるビジュアルの可能性も探りましたが、それだと説明的すぎて見る人の想像が広がらず、そもそも3人のシンボルにならないと思いました。試行錯誤する中で、方位図ならチャーミングに見えるのではないか、という考えに至りました。それもフリーハンドで書いた方位図で、E(東)とW(西)の位置が逆になっていたり、文字が反転していたりする。『新しい地図』の向かう先があらゆる意味でフリーで、どこにでも行ける。そんなイメージです。

企画はすぐに通りましたか?

依頼から日を空けず、制作チームで打ち合わせがありました。まだアイデア出しをする段階ではなかったのですが、方位の案と他にも数案、封筒に入れ携えていったのです。それを多田さんが目ざとく見つけ(笑)、「その封筒の中身、見せて」と言われ、ひとまず方位図の案を見せました。多田さんは、「これがいい。これで進めよう」と即決しました。もしかしたらロゴデザインとしては未完成だったかもしれませんが、多田さんは見る人の想像力をもって完成するということが一番大切だと考えていたんだと思います。そしてこの時に、「新聞30段で展開したらすごくいい」という話になったんです。今思えば、新聞広告ありきで作った原稿ではなかったことが、自由なクリエーティブにつながって良かったのかもしれません。

方位図の文字や矢印は、「新しい地図」の本人たちの手描きでした。

3人が主体となって志を込めた方が良いと思ったのです。ニューヨークにアトリエを借りて3人で楽しく描いている様子を撮影し、それをブランドムービーにして、完成した絵をそのままシンボルにしたらどうかという案もありました。香取さんはアーティスティックな強い感性の持ち主ですし、草彅さん稲垣さんもそれぞれ独自のセンスを持っているので、シンボルを共作したら面白いのではないかと。スケジュール的に難しかったので実現しませんでしたが、それに近いライブ感のあるものを表現したいと考えました。

新聞紙面がネット拡散の起点に

作業風景について教えてください。

クリエーティブチームがそろうマンションの一室に、3人は少し緊張した面持ちで現れました。そして作業に入る前に、一人ひとりがすばらしい挨拶をしてくださいました。さわやかに晴れた気持ちのいい日で、きっといいものができると思いました。

方位図の書き込みは、「新しい地図」としてスタートした3人の最初の共同作業となりました。筆記具や紙の種類をいろいろと用意して、それぞれに文字や矢印を書いてもらいました。すごく楽しそうでしたね。もちろん、僕が書いた見本よりも格段にいい字がそろいました(笑)。それを大事に持ち帰って、一つの方位図に仕上げました。ちなみに、「N」と「図」は稲垣さん、「地」と反転させた「E」は草彅さん、「新しい」「W」「S」と矢印は香取さんの筆跡です。決していわゆる上手ではないけれど自由で、個性が感じられて。いい意味で力の抜けた新しいビジュアルを目指しました。

さわやかな背景も印象的でした。

背景は、3人の新しい始まりを象徴する朝の光と、木漏れ日の中で新聞を広げた時の気持ち良さを表現しています。床に映った木漏れ日は、青空のようにも見えます。これは撮影を担当した瀧本幹也さんのアイデアです。木漏れ日なのか、空なのか、方位も自由、天地も自由。背景からも新しい地図のこれからの自由さが伝わるといいなと思いました。

紙面の囲み罫が途中で切れていました。

抜けの良さや風通しの良さを表現するために、わざと四方の罫を外したんです。広告の掲載は、公式ファンサイトの開設日にあたる2017年9月22日の朝刊でした。この日のサイトでは冒頭で約50秒の動画が配信され、いくつかのメッセージが発信されました。「ボーダーを超えよう。」「さあ、風通しよくいこう。」といったコピーライター権八さんによるメッセージです。こうしたメッセージと呼応させるねらいもありました。

方位図のアルファベットに注目し、「NEWS+MAP(地図)=NEW SMAPを意味しているに違いない」と推測するファンの声がSNS上で拡散しました。そのような意図はあったのでしょうか。

アルファベットの構成要素がそうなったのは偶然です。謎かけ的な表現にすることで、見る人それぞれに想像してもらえたらという思いはありましたが、ファンの皆さんの思考の深さは、制作チームの想像をはるかに超えるものでした。筆跡を見て誰が書いたか言い当てるファンも多く、それにも驚かされました。

審査会では、「新聞紙面がネット拡散の起点となった」という審査評が複数ありました。ネットで拡散されることはどの程度予想していましたか。

ある程度は予想していましたが、あれほど広がるとは思いませんでした。紙面に掲載した公式ファンサイトへのアクセス数もかなり伸びたと聞いています。「新しい地図」は、活動開始日からファン会員「NAKAMA」を募り、その後、ユーチューブやインスタグラムなどネットメディアの活用を始め、さらにAbema TVの「72時間ホンネテレビ」に出演するなど、様々なメディアに進出しました。そのスタートを飾った新聞広告は、メディアの特性とあいまって、ある種の事件というか、号外に近い衝撃として伝わったのではないかと思います。3人のファンの中には、以前広告掲載のクラウドファンディングに参加し、新聞を通じて彼らに応援メッセージを送った人もいます。今回の新聞広告は、そうしたファンの声に対するアンサーとしての意味合いもありました。3人は大事な節目だととらえていて、紙面を部屋に貼っているそうです。

一連の制作について、改めて感想をお願いします。

今回の制作は、多田琢さん(CrD)、山崎隆明さん(CrD)、権八成裕さん(CrD・D)、瀧本幹也さん(P)、香取有美さん(D)、稲垣護さん(Pr)とのチームで進めました。国民的な人気を誇る3人の門出に携わる仕事で、しかもすべてが極秘の作業だったので、大変なプレッシャーがありましたが、だからこそやりがいがあり、いい経験になりました。広告主であるCULENはもとより、支えてくれているNAKAMAのみなさん、広告にかかわったすべての皆さんと最高賞の喜びを分かち合いたいと思います。ありがとうございました。

「広告主参加の部」入賞作品一覧を見る
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